一度に納められないときの納税の猶予
この記事の要点
納税額が資金を上回ったとき、黙って放置するのが一番損です。国税通則法には申請に基づく猶予の制度があり、要件に当てはまれば分割にできます。
条文
制度の骨格は3つの条件です。
① 災害・盗難、本人や生計を一にする親族の病気やけが、事業の廃止・休止、事業について著しい損失を受けたこと——といった該当する事実がある
② その事実によって一度に納めることができないと認められる
③ 自分から申請する
認められれば、払えないと認められる金額を限度に、1年以内の期間で猶予されます。放っておいて認められる制度ではありません。
ポイントは3つです。①該当する事実があること ②一時に納付できないこと ③自分から申請すること。放っておいて認められる制度ではありません。
災害の場合は別枠(46条1項)
災害で財産に相当な損失を受けた場合は、別枠の猶予があります。こちらは災害がやんだ日から2か月以内に申請し、納期限から1年以内の期間で猶予されます。
まず期限内に申告する
猶予は納付の話であって、申告の話ではありません。申告を止めると無申告加算税が別に発生します。→ 納付や申告が遅れたときの延滞税と加算税
1. 期限内に申告書を提出する
2. 払える分だけでも納付する(延滞税はその分止まる)
3. 残りについて、税務署に相談・申請する
放置した場合との違い
| 放置 | 猶予が認められた場合 | |
|---|---|---|
| 延滞税 | 2か月経過後は高い率が続く(令和8年は年9.1%) | 猶予期間中の延滞税は軽減または免除される場合がある |
| 財産の差押え | 滞納処分の対象になる | 猶予期間中は原則として行われない |
| 取引への影響 | 納税証明書が取れず、融資・入札に影響 | — |
猶予期間中の延滞税の扱い、担保の要否、申請書の様式には細かい規定があります。金額と事情によって変わるため、税務署の徴収担当に直接相談してください。相談しただけで不利になることはありません。
そもそも起きないようにする
- 納税用の資金を別に置く:入金があった時点で一定割合を移す → 法人の預金管理と資金繰り表、口座を複数持つべきか
- 納付書は届かない:期限を自分で管理する → 法人の納税方法
- 2期目から中間申告が増える:年間の納税回数が変わる → 法人税の中間申告、消費税の中間申告
- 赤字でも均等割は出る:利益と納税は連動しない → 赤字でも払う均等割
地方税・社会保険料も別に相談窓口がある
国税の猶予は税務署ですが、法人住民税・法人事業税は都道府県税事務所や市区町村、社会保険料は年金事務所が窓口です。それぞれ別に申請が必要になります。
資金繰りが恒常的に厳しいなら、続けるかどうかの判断も含めて考える段階です。→ 続けるか畳むかの判断、ひとり法人の損益分岐点
出典・根拠(条文)
- 国税通則法第46条第1項:震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害により納税者がその財産につき相当な損失を受けた場合において、損失を受けた日以後1年以内に納付すべき一定の国税があるときは、災害のやんだ日から2月以内にされた申請に基づき、納期限から1年以内の期間を限り、その国税の全部又は一部の納税を猶予することができる。
- 同第46条第2項:次の事実がある場合において、その事実に基づき納税者がその国税を一時に納付することができないと認められるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、納税者の申請に基づき、1年以内の期間を限り、その納税を猶予することができる。一 財産につき災害を受け、又は盗難にかかったこと。二 納税者又は生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと。(以下、事業の廃止・休止、事業について著しい損失を受けたこと等が続く)
出典:国税通則法46条1項・2項(e-Gov法令検索で条文を確認)。猶予期間中の延滞税の取扱いや担保については国税庁・所轄税務署の案内を参照/最終確認日:2026年9月9日