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競業避止と利益相反取引

この記事の要点

「自分の会社なんだから自由にできる」ではありません。社長個人と会社の間の取引は、会社法が承認手続きを求めている類型です。ひとり法人でも例外ではありません。

承認が要るのは3つの場面

会社法は、取締役が次の取引をするとき、先に会社の承認を得ることを求めています。

  1. 競業取引:取締役が自分または第三者のために、会社がやっているのと同じ種類の商売をする
  2. 自己取引:取締役が自分または第三者のために、会社と直接取引をする
  3. 間接取引:会社が取締役の借金を保証するなど、形の上では第三者との取引だが、実質は会社と取締役の利益がぶつかる

承認するのは、取締役会を置いていない会社なら株主総会、置いている会社なら取締役会です。ひとり法人は通常、取締役会を置いていないので株主総会になります。→ 取締役会を置くか置かないか

承認を得ておくと、「自分が会社の代表として、自分個人と契約する」という形(自己契約)も有効に扱われます。承認がないと、この点が後から問題になります。

ひとり法人で該当する典型例

取引関連
自宅の一部を会社に貸して家賃を受け取る2号自宅を事務所にした場合の経費
自分の車を会社に貸す/会社に売る2号社用車を持つか
社長が会社にお金を貸す(役員借入金)2号(無利息・無担保なら該当しないと解される場面もある)役員貸付金と役員借入金
会社が社長の個人的な借入を保証する3号
社長が個人事業として同種の事業も続ける1号法人化するかどうかの判断
1号は見落としやすい類型です。法人化した後も個人名義で同じ商売を続けると、会社の事業の部類に属する取引を自己のために行うことになります。法人と個人のどちらで受注するかを整理しておいてください。

怠るとどうなるか

会社法は、承認を取らずにやった場合の効果を「推定する」という形で定めています。これが実務上いちばん重い部分です。

やってしまったこと法律上どう扱われるか
承認なしで競業取引をしたその取引で自分や第三者が得た利益の額が、そのまま会社の損害額と推定される
承認なしで自己取引・間接取引をして会社に損害が出たその取締役は任務を怠ったものと推定される

「推定される」とは、反対の証明ができない限りそう扱われるということです。争いになったとき、責任がないことを説明する側に回ります。取締役の責任全般は→ 取締役の義務と責任

実務としてやること

1. 取引の内容を決める(対象・期間・金額)
2. 株主総会議事録を作り、重要な事実を開示したうえで承認した旨を記載
3. 契約書を作る(会社と個人の2者で)
4. 実際に金銭をやり取りする(帳簿と一致させる)
5. 議事録と契約書を保存する

ひとり株主・ひとり取締役でも、紙を1枚残すだけです。議事録の作り方は→ 議事録の作り方と保存期間

税務でも見られる

会社法の手続きとは別に、税務では金額が適正かが問題になります。自宅家賃を相場より高く設定すれば、その差額は役員給与とみなされる可能性があります。

合同会社の場合

会社法第594条第1項(競業の禁止):業務を執行する社員は、当該社員以外の社員の全員の承認を受けなければ、一 自己又は第三者のために持分会社の事業の部類に属する取引をすること、二 同種の事業を目的とする会社の取締役・執行役・業務執行社員となること、をしてはならない(定款に別段の定めがある場合を除く)。
会社法第595条第1項(利益相反取引の制限):業務を執行する社員は、一 自己又は第三者のために持分会社と取引をしようとするとき、二 持分会社が業務執行社員の債務を保証すること等の利益相反取引をしようとするときは、当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければならない(定款に別段の定めがある場合を除く)。

競業は「全員」、利益相反は「過半数」と承認の要件が違います。社員が自分だけなら承認する相手がいませんが、取引の内容と判断は記録に残してください。→ 合同会社の運営ルール

出典・根拠(条文)

6問で次にやることを出す

出典:会社法356条、365条、423条2項3項(e-Gov法令検索で条文を確認)/最終確認日:2026年9月9日